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今日の公共事業を取り巻く環境は、例えば本県における国と地方分とを合わせた公共投資総額は、ピーク時の平成5年度は約4,760
億円、これが平成19年度には約2,262億円と毎年厳しさを増す中、B/C的考え方が一層進むなど地方にとっては一段と深刻なものがあります。
そのようななか本県では、指名競争入札から一般競争入札へと入札制度の変更が一挙に進められるところとなり、企業倒産の多発など関連業界はもとより本県経済への影響が大きく懸念されるところとなっております。
そこで今回の投稿依頼に際し「公契約のあり方」について私見を述べてみたいと存じます。
そもそも「公共の用に供する構造物を一定の管理の下で創る」といった行為は、人間が集団的生活を始め支配体制が始まった時点に起源を発し、そしてこれが体系的に今日の公契約のあり方につながるような形を整え始めたのは、室町時代から江戸時代にかけての勘定奉行や普請奉行・普請方等による土木工事の管掌にあるとも言えようかと思います。
そのような中、明治23年に政府により「一般競争入札原則の規定」などを中身とした会計法が制定され、時を経て敗戦後の昭和24年には、適正な工事の施行、健全な建設業の発展に資することなどを目的として建設業法が制定をされております。
そしてその後、技術者の設置や業者の登録制の規定などを内容とするこの建設業法は、幾度かの改正を経ながら昭和46年には、経済の発展に伴い工事規模が大型化してきたことや技術及び工法が高度化したことなどを受け、公共事業を請け負う業者を登録制から許可制に変更することや下請け施工に係る規定などの改正が行われることとなります。
そのような中、測量・設計業務においては、昭和34年の事務次官通達による「設計・施工分離の原則」、昭和39年の「建設コンサルタント登録規程」を契機に今日の発受注体系などへと発展して来ております。
ところで本県においては、昭和33年に本県測量の草分けと言える「南興測量」が設立され、昭和37年には九州工営が設立されております。その後、昭和38年の「公共機関における積極的な建設コンサルタントの活用」を促す答申や昭和39年の建設コンサルタント登録制度の告示等を受け、本県においても測量業務の外部発注が始まるところとなります。なお県による外部委託については、測量業務では昭和39年の石崎川の業務、委託コンサルタント業務では昭和43年に土地開発公社を設立しそこへの業務委託を始めたのがそれぞれ先駆けのようであります。
またこの間、昭和40年には国土開発、続いて親協測量が起業し、昭和42年10月に宮崎県測量設計業協会が発足するなどして今日に到っております。
さて、このように会計法や建設業法などは数次の改正を経て今日に至っておりますが、これらの改正時においても指名競争入札制度については、大きな問題指摘などなされることもなく、明治33年のその実施に係わる細則等の創設以来今日まで長年にわたり採用され続けて来ております。
申すまでもなく指名競争入札制度では参加業者の技術力や履行能力などが事前に把握され、契約内容の履行延いては品質確保等の面からは、一般競争入札制度と比べ大変有利な制度であり、歴史的に見ても一般競争入札制度との比較有利から、これに遅れこれを補完する形として始まった制度であります。
ちなみに地方自治法施行令では指名競争入札について、一般競争入札に向いていない契約、あるいはその必要が無い契約、そしてもう一つ、一般競争入札に付すほうが不利な契約の場合にこれが出来るとしており、入札制度の選定に際しては、その優劣比較が極めて重要であります。
では、今なぜこの制度が否定されるのか。それは幾たびもの入札・契約に係る入札妨害や入札談合などの不祥事の発生に有る。則ち、発注者側が、これらによる国民・県民の批判を躱す為に選択しているに他ならないと言えます。
このように、歴史的にも優れた制度として採用され続けて来た指名入札制度が、関係者の不祥事、言い換えれば「制度を運用する人間の関与のあり方によって起こった不正」を理由に制度そのものを否定する事は「それ以上の深刻な問題を派生させる」つまり「結果的に、納税者にもっと大きな不都合を与えることにもつながり得る行為である」ということに我々は早く気付くべきであります。
その理由の一つで有りますが、仮に不当な廉価受注が原因となり粗悪な成果図書や構造物が納められることともなれば、それは、その後の維持修繕費用の増大等コスト的な損失のみならず、利用者が犠牲となるような公衆災害すら発生しかねず、また受注企業等の倒産の多発は地域の雇用や経済を大きく損なうなど、その弊害は最終的に県民へと及ぶからであります。
そのような理由も有り、今般の本県における「充分な検証無きまでの一般競争入札制度の導入」に私は大きな疑問と懸念を持っております。
では、すぐにでもそれを指名競争入札制度へと戻せるのかと言う事になりますが、誠に遺憾ながら一般競争入札制度の導入が結果的に多くの県民の評価を得るところとなっているとするなら、これを元に戻す勇気を今ここで県に求めても、理由の如何を問わずその実現は困難かと考えます。従って私共としましては、当面の策としては何が可能なのかを冷静に見極め、まずは今実現が可能と思える事に全力を挙げ、「より健全な入札・契約の姿」に近づけながら、最終的には「真に有るべき入札・契約の姿」を確立するという考え方の方が現実的であろうかと存じます。
今回の一般競争入札制度の導入以来、「自分の会社はこの仕事をいくらで完成出来るのか」いわゆる見積りに基づき入札していては、万の内に一つも落札は出来ず、落札に至る為には県が定めた最低制限価格をどこまで正確に推計出来るか、つまり「最低制限価格の近似計算能力の優劣」のみがその正否を分ける。
このいびつな状況が現に本県の実態であり、既に測量・調査・設計業務ではその積算体系が簡素な事も有って、入札参加者の大半が最低制限価格と同額での入札となる状況にあります。そしてくじ引きによる落札の結果仕事が終わったときは赤字が発生している。これが今や日常的に起きており、そして工事部門においてもこの事は大差なき状況にあると仄聞いたします。
当然ながら公契約において「かような事態は決して例外には有らず」といった状況が続くなら、それは法的面からも行政責任の面からも決して問題は小さくありません。「赤字と判りながらもその価格でしか受注出来ない」このような状況は決して正常とは言えず、今急がれるべきはまさにこれを是正していく事にこそあると思います。
では、その為に何をどうすべきなのか。
この事について発注者側、受注者側、そして費用の負担者であり利用者である県民の立場それぞれから考えてみたいと思います。
地方自治法は、入札・契約に際して、知事に対し「最も県側に有利な相手との契約」を求めております。そしてその中で、最も有利な相手の定義を、歳入の伴う契約に際しては、「入札参加者の中で最も高い金額で応札した者」としております。また歳出を伴う契約に際しては、「あらかじめ予定価格を定めた上で、その金額の範囲内において最も低い金額で応札し
た者」とし、同時に「契約内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるときは最低制限価格を設けることが出来る」ともしております。
つまり、本県の入札・契約における予定価格上限拘束方式と最低制限価格設定方式はここを根拠とする訳であります。従いまして、これに基づくならば、最低制限価格近くでの契約であっても標準的な能力を有する企業であれば「所定の品質等を確保すべく契約内容を忠実に履行することで赤字が発生するといった事態には到らないはずの価格」が最低制限価格として設定されていなければならない訳であります。
しかしながら現実問題として「実行予算を組む時点で既に赤字が出る」あるいは「努力の限界を尽したが設計以上の経費を要した」などといったようなことが日常起きているとすれば、その原因として、最低制限価格の積算対象とすべき費目が抜けている、若しくはそれを履行するに必要とする費用が適正には計上されていないなどの疑問、即ち最低制限価格の算定のあり方自体に問題が有るのではないかという疑いも充分に考えられます。
具体的事例を挙げますれば、例えば土木工事では、関係法などで専任技術者の設置や本社等事業所の設置、あるいは法定福利などを元請け業者に対して義務付けております。しかし本県の最低制限価格には一般管理費は全く計上されていません。更には、その算定基礎となる予定価格設定時点での問題として、任意仮設工事及び指定仮設工事の定義とその費用算定のあり方などを始め幾つもの点で職員間ですら見解が異なるなど、発注者側の認識不足などから来る重大な問題も散見される状況にあります。
その他にも現場管理費の役務費に当る現場事務所設置用地や仮置きヤードなどの借地料等本来計上すべき経費が本県の設計では基本的に計上されていないなどと設計漏れにつながる問題を幾つも含んでおります。これらは、発注者側の関係法や業務等委託契約書更には工事請負契約約款や標準歩掛りなどへの認識不足、あるいは担当者の現場経験不足などに起因していると思います。
このような事からして、予定価格や最低制限価格そのものが合理性を欠く数値として設定されている可能性の有る事が充分推察されますが、これについては、ひとり発注者側責任のみならず受注者側にも責任が有ると言えます。
何故ならば、見積もり能力や履行能力の欠如している企業は論外として、はたして受注者側は上記のような問題箇所を設計図書などから「見抜くことは出来ているのか」その上で「約款などに基づく質疑や契約変更などへの対応は行っているのか」など受注者側のあり方も私には疑問であります。とりわけ理解し難いのは、本県の設計図書に関してでありますが、特記仕様書等における施工条件などの明示内容の乏しさとそれに対する受注者側の問題意識の低さであります。
言うまでもなく施工条件明示の有無は、責任所在の明確化つまり設計変更につながる重要な分岐点ともなり損益に直結する設計図書でもあります。そして次に公共施設の利用者・納税者たる県民の立場からでありますが、この立場からは「同じ品物を購入するのであれば安い方が良い」に決まってます。そしてまたこれについては、申し上げましたように法もこれを求めていますし安すぎたが故に結果的に納税者が損する事を防止する為の策として最低制限価格の設定も認めております。
ですから仕組みの上では、私共は「将来の人達の利用にも耐え得る品質であることが保証された公共施設を最も有利な価格で確保出来る」こととなっているのであります。
但しそれが為には、適確な設計がなされ一定以上の施工能力(技術・経営面など)の有る企業群によって談合などの不正が行われることなく適正に競争がなされる。これが不可欠条件で有る事は言うまでもない所であります。このような理由から特に企業の技術力については、公共工事の品質確保の促進に関する法律においても第11条において発注者に対し事前の審査を求めております。
しかしながら一般競争入札となると、競争に参加しようとする企業が「契約内容通りの施工が行え品質の確保が出来る企業であるか否か」について、法の求めに従い入札日以前にその全てについて、しかも個別の工事ごとにこれを審査する事が可能なのか。今の県の態勢からしてそれは限界の外に有り実際は事後審査での対応となっております。
このことは、県民側にとっては参加企業に対する信頼性への不安が残るのみならず、参加企業側にとっても必要以上の価格競争を強いられる事ともなりかねぬ大きな問題といえます。
ただ今回の見直しによるこれら低価格などに起因する品質等への信頼性の不安に対し、県ではその心配が残る現場の監視強化への取り組みを始めたところでもあります。
しかしながらその実績は、県自体が監視強化が必要と判断した現場数の半数にすら満たず、またその関与の度合たるやとても監視などと言えるようなものでは無く、このような監視のあり方で履行の完全なるを信ずるのは余りにも無理があります。
ところで、安値受注と品質の確保に関してでありますが、私共は過去に、例えば新幹線などのトンネルにおける被覆コンクリートの剥脱落下事案や橋脚、橋台などの配筋手抜き工事など、廉価受注が原因の一つであるともされているこれら現場の現実を既にいくつも目の当たりにして来ているのであります。
更に加えれば、これらの事態は、新たな補修費用の発生など維持管理費の増大や耐用年数の短縮化、あるいは人命への危険性をも秘めることを窺わせるものでもあります。
申し上げましたように法令や約款等は、このような事も予想した上で、公共事業の入札に際してはこれら不都合を排除するなど総合的な観点から最も有利な相手との契約がなされるよう課している訳であります。
しかしながら、先程列挙しましたような現状からして、今の本県の入札・契約の実状は、県民が長期にわたり安全に利用できる公共物を「間違いなく最も有利な価格で調達出来ているのか」については疑問の多いところでもあります。
さて色々申し上げましたが、今回訴えたい事の要は、一般競争入札制度の下での入札では、適格な設計により正確に予定価格が見積もられ、合理性を欠かない最低制限価格が設定された上で、一定以上の技術力などを有する信頼出来る業者によって入札が行われる事が極めて重要であり、とりわけ設計漏れや不合理な最低制限価格の設定などによる「原価割れ落札は、結果的に受注業者のみならず納税者や利用者に対してまで多大な損害をいつの日か及ぼしかねない」という重大な危険性を含むことへの警鐘であります。
まさしく、建設業法がその第19条3で、通常必要と認められる原価に満たない金額での契約締結を禁じている理由の一つはそこにあります。
今回県は、品質を確保しながら同時にこれら安値受注を何とか回避したいとの思いも有り、総合評価方式などについても試行を始めましたが、これとて結果的には赤字を一層増大させる事に繋がり安い手法で有り、品確法第14条の面からだけでも大きな問題を秘めた手法で有って、今後必ずや様々の面で更なる議論を必要とする時が来ると言う事を今ここで申し上げておきます。
更にもう一点附言を許して戴きたいのは、最終的な入札制度のあるべき姿についてで有ります。
私個人の考え方としては、これについては、まず一般公募に付し応募者全員について審査を行い、適格と判断出来た者全てを参加させる、言わば一般公募型指名競争入札制度が理想であろうと思料いたします。
しかしながら、その為の労力や時間等を推量する時、これは極めて効率性などに乏しく且つ発注者態勢からも限界を超すなど実現は困難であろうと思われます。従って現実的には、関係者の関与のあり方や指名業者数の増大などにより、不正や不公平性の排除を担保した上での指名競争入札こそが行き着くべき方法であろうと思っております。
勿論その実現には大変厳しいものが予測されますが、私はこれが実現の際の効果は、必ずや県民の利益となりまた受注者・発注者相方の為となるもので有る事を信じており、それが故その為の努力を積み重ねるべきで有ると思っております。
さて今回は紙面の関係も有り極めて漠然的な内容となり、果たして私の考え方を率直にお伝え出来たものか否か大変心配でありますが、またいつか機会を戴けるならば、今回例示いたしましたような様々な問題点などについて実際の設計事例や契約事例などについて具体的に検証しながら今の公共事業の問題点などについて述べてみたいと思います。
皆様には、極めて厳しい経営環境の下で日々死力を搾っての御苦労の中におられますが、県議会といたしましても、様々な問題が見えて来ている今の入札・契約方式等については、納税者(利用者)、受注者、発注者それぞれの立場から、真に有るべき入札・契約の実現を図り、三者それぞれが満足出来る所まで一刻も早く到達しなくてはならないと考えております。
皆様方の一層のご支援ご協力をお願い申し上げ、併せて貴協会及び会員各位の更なるご発展を御祈念申し上げまして結びといたします。
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